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【連載・黒髪と美の歴史】どうして黒髪女性に魅かれるのか#7

【連載・黒髪と美の歴史】どうして黒髪女性に魅かれるのか 第七回

平安時代に成立した『うつほ物語』や『夜半の寝覚』などでは、髪が長いことだけではなく、艶やかな黒髪であったり、ふさふさと髪があることが美しさの象徴として描かれました。ところで、今のわたしたちはひとことで「艶やかな黒髪」といってしまいますが、平安文学には、この髪の艶やかな黒を讃える表現が、さまざまにみることができます。

さまざまに表現される「黒髪」の美しさ

平安時代の恋愛物語ともいえる『夜半の寝覚』には、「御髪はゆらゆらと、翡翠とはこれをいふにやと見えて」と翡翠(カワセミ)の羽の色になぞらえて、黒髪の艶々とした美しさを表現しています。また、恋愛や生まれ変わりをテーマにした物語の『浜松中納言物語』では、「いただきより末まで、つゆおくれたる筋なく、まことに金の漆なんどのやうに、影見ゆばかりつやつやとして」と、漆塗りにひとの姿が映ってみえるくらい艶々としている髪が美しいと表現しています。

日本人の「黒髪」へのこだわり

一昔前だと、学校の生徒指導などで、髪を染めていたら「黒にするように」と、指導がおこなわれていました。もちろん、今でも校則で染髪を禁止しているところは少なくありません。そのため、強制的に髪色を黒くするように指導している学校もあります。それは、わたしたちは「髪色は黒」という意識が強く、「日本人なら髪が黒くてあたりまえ」と思い込んでいるからです。ですが、じっさいは生まれながらの髪色が黒とは限りません。そのため、地毛が茶色であるにもかかわらず、むりやり黒く染めさせた学校が、生徒などに訴えられることも珍しくありません。

たしかに日本人の多くは、歴史的には黒色を愛でてきました。日本の伝統色には、黒と一口にいっても、漆黒や紫黒にはじまり、黒橡、黒鳶、黒紅、鉄黒、黒檀、濡羽色などと、じつにたくさんあります。濃いねずみ色に近い黒の黒橡、暗い赤褐色の鳶色が暗くなった黒鳶、青みを帯びた黒の濡羽色など、日本人は黒に対して、ひとかたならぬおもいを抱いてきた証拠です。

もし、黒に興味がなければ、ただ「黒色」と呼んでいればよかったのに、ささいな違いに注目し続けていたからこそ、その違いをあらわすために、いろいろな黒の色の種類が生まれたんです。とはいえ、現代ではざまざまな背景をもっているひとが多く、髪色は必ずしも黒ではなく、また黒色以外の髪色のひともいます。今の時代では、黒髪だから美人問いは一律にはいえないでしょう。

いずれにしても平安時代では、黒の違いを愛でる心が、黒髪の表情を愛でる心へとつながっているんです。そして、艶やかな黒髪が美人の条件となっていきました。また、髪の長さも自分の背丈よりも長く、髪先はふさふさと裾引いている。そんな髪が愛でられ、そのような髪をもつ女性が美人とされたんです。

黒髪と美の歴史連載一覧

平松隆円(ひらまつりゅうえん)

大学教員 / 化粧心理学者 / コラムニスト

1980年、滋賀県生まれ。2008年、世界でも類をみない化粧研究で博士(教育学)の学位を取得。国際日本文化研究センター、京都大学、タイ国立チュラロンコーン大学などを経て、現在は東亜大学准教授、芸術学部トータルビューティ学科長。 専門は、化粧心理学や化粧文化論。主な著書に『化粧にみる日本文化 だれのためによそおうのか』(水曜社)、『邪推するよそおい 化粧心理学者の極私的考察』(繊研新聞社)などがある。

<この連載は著書「黒髪と美の歴史」よりSANKEI HairCare Postにあわせ寄稿していただいております。>

黒髪と美の歴史-平松隆円-角川ソフィア文庫2019/7/24

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