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【連載・黒髪と美の歴史】どうして黒髪女性に魅かれるのか#14

【連載・黒髪と美の歴史】どうして黒髪女性に魅かれるのか 第十四回

ルイス・フロイスが『ヨーロッパ文化と日本文化』のなかで書き残した、鬘もしくは髢とよばれる添え髪は、いったいどうやって入手していいただのでしょうか。

《前回 ヨーロッパ人も驚いた日本人女性の長い髪》

【連載・黒髪と美の歴史】どうして黒髪女性に魅かれるのか#13

それについても、ルイス・フロイスは「日本の女性はシナから商品として渡来する鬘をたくさん買い入れる」と『ヨーロッパ文化と日本文化』のなかで書き残しています。ルイス・フロイスによれば、シナ(=中国大陸)から輸入していたというんです。ですが、本当に輸入されていたかどうかはわかりません。とはいえ、国産の添え髪があったのは事実です。

添え髪を作る「おちゃない」

儒者と医者を兼ねる儒医だった黒川道祐が山城国(今の京都府の南部地域)の地理、沿革、神社、寺院、古跡、陵墓、風俗行事、特産物、工芸文化などを詳細にまとめた『雍州府志』によると、抜け落ちた髪を集めて束ね、それを売る仕事があったことがしるされています。この仕事、いまの嵐山や洛西あたりの女性が頭に布袋のせ、集めていたといいます。このとき、「落ちはあるかないか」と声をかけていたことから、この仕事を「おちゃない」とよぶようになったそうです。集めた髪はきれいに水で洗って長さを揃え、添え髪を作っていたとされています。半端な長さの髪は、黒焼きにされ、淋疾(いわゆる淋病などの淋菌への感染により起こる感染症)の治療や止血薬としても使われていたとされています。

添え髪は「薄毛男性」も購入していた!

添え髪は当初、髪が短い女性たちをその商売の相手としていたのですが、次第に頭がハゲてきた男性も購入するようになったといいます。というのも、髪が薄くなり、髷が結えなくなった武士は隠居しなくてはならないというルールがありました。それを避けるために、添え髪を利用したんです。

じつは、日本人男性たちがハゲを嫌う意識はこのあたりにルーツがあります。というのも、頭がハゲて髷が結えずに隠居を余儀なくされるということは、社会の一線を退かなければならいことを意味します。
家督を子に譲り、自分はもう用なしだということを認めないといけないわけです。それって、すごい屈辱ですよね。そして、頭がハゲていることを知られるということは、すごく恥ずかしいことだということにつながっていきます。これが現代に生きているわけです。欧米には、頭がハゲて髷が結えずに隠居を余儀なくされるという歴史はないわけですから、ハゲたからって恥ずかしいなんていう意識は生まれませんでした。ハゲを恥ずかしく思う意識は、たんなる美醜の問題ではないんです。

黒髪と美の歴史連載一覧

平松隆円(ひらまつりゅうえん)

大学教員 / 化粧心理学者 / コラムニスト

1980年、滋賀県生まれ。2008年、世界でも類をみない化粧研究で博士(教育学)の学位を取得。国際日本文化研究センター、京都大学、タイ国立チュラロンコーン大学などを経て、現在は東亜大学准教授、芸術学部トータルビューティ学科長。 専門は、化粧心理学や化粧文化論。主な著書に『化粧にみる日本文化 だれのためによそおうのか』(水曜社)、『邪推するよそおい 化粧心理学者の極私的考察』(繊研新聞社)などがある。

<この連載は著書「黒髪と美の歴史」よりSANKEI HairCare Postにあわせ寄稿していただいております。>

黒髪と美の歴史-平松隆円-角川ソフィア文庫2019/7/24

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