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【連載・黒髪と美の歴史】どうして黒髪女性に魅かれるのか#16

【連載・黒髪と美の歴史】どうして黒髪女性に魅かれるのか 第十六回

長い髪が、邪魔になることはいくらでもあります。現代の女性だと、そんなきは自分の髪で輪をつくり、そこに髪を通して結ぶことで整えるという方法をとるひとも少なくないでしょう。じつはこの方法、平安時代の人もやっていたようです。また、この時代だと髪をぐるぐると巻き、笄(=こうがい)で仮止めをして、笄髷という髪形にすることもあったようです。

この笄、箸に似ていて、根もとが平たく先端は細いというかたちをしていました。なんのために使うかというと、もともとは頭を掻く物でした。江戸時代中期の有職故実家である伊勢貞丈が、宝暦111761)年に軍陣の作法を子孫に伝えるために集成した『軍用記』のなかで、笄は頭を掻く物として書き残しています。じつは、笄は中国から由来した物とされていますが、笄自体に「髪を掻く」という意味があるんです。

笄は、女性が使う物というよりも、髷を結っている男性が使うものでした。そのため、武士は笄を太刀や脇差の鞘に差して収納し、髷が痒くなったときや、髪が乱れたときに使用していたといわれています。

髪の毛を毎日洗わず、髷を結っているので、汚れたり汗をかいたりすると、頭がかゆくなりますよね。そんなときに、笄を使って掻いていたんです。

頭がかゆいとき以外にも、笄は使われていました。例えば、平安時代後期の歴史物語である『大鏡』のなかで、大酒飲みの内大臣藤原道隆は、京の上賀茂神社(=賀茂別雷神社)参詣の途中、牛車のなか泥酔してたのを弟の藤原道長によって起こされます。そのとき、藤原道隆は乱れた髷を整えるためにも笄を使用しました。笄は、男女を問わず日常的に携帯し、使用されていたんです。そして、頭を掻く道具だった笄を利用した笄髷が生まれたことで、笄が髪飾りとして変化をしていきます。その材質もツゲなどの木のほか竹、動物の骨、鼈甲(=べっこう)、象牙、金や銀などで作られ、撒き餌が施される場合もありました。

頭がかゆいときに使う道具が、便利だからと女性の長い髪を束ねる道具に変化し、最後は髪飾りとなっていく変化を、誰が想像できたでしょうね。

黒髪と美の歴史連載一覧

平松隆円(ひらまつりゅうえん)

大学教員 / 化粧心理学者 / コラムニスト

1980年、滋賀県生まれ。2008年、世界でも類をみない化粧研究で博士(教育学)の学位を取得。国際日本文化研究センター、京都大学、タイ国立チュラロンコーン大学などを経て、現在は東亜大学准教授、芸術学部トータルビューティ学科長。 専門は、化粧心理学や化粧文化論。主な著書に『化粧にみる日本文化 だれのためによそおうのか』(水曜社)、『邪推するよそおい 化粧心理学者の極私的考察』(繊研新聞社)などがある。

<この連載は著書「黒髪と美の歴史」よりSANKEI HairCare Postにあわせ寄稿していただいております。>

黒髪と美の歴史-平松隆円-角川ソフィア文庫2019/7/24

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